(5)NFCビジネスで先行するトッパンフォームズの取り組み

2010年8月16日  08:28

NFCモジュールの機器搭載で世界屈指の実績
ICカードのオンデマンド発行サービスもスタート

トッパンフォームズでは2005年からNFC関連のビジネスに着手した。NFCフォーラムには理事会以外の委員会、ワーキンググループへの参加権、被選挙権を有するプリンシパルメンバーとして加わっている。同社ではこの5年間の取り組みは費用対効果も含め、一定の成果を感じていると自信を見せている。同社の取り組みを追った。

ぴタッチの販売がPaSoRiの売上アップを後押し

SDKは200社以上の実績を誇る

トッパンフォームズのNFCの関連製品は、リーダライタではISO/IEC 18092(NFC IP-1)に対応したUSBスティック型、miniSD型、組込みモジュール型を供給している。

アイ・オー・データ機器から発売された「ぴタッチ」

市場に投入した初めての製品は、2008年にアイ・オー・データ機器から発売された「ぴタッチ」となった。USB接続タイプとなっており、対応OSはWindows Vista SP1/XP SP2。

「当時、コンシューマ向けの非接触リーダライタ製品にはPaSoRiがあり、開発元のソニーさんも競合するという懸念を抱いていました。しかし、結果的にはぴタッチが出たことにより、家電量販店などでリーダライタコーナーが設けられ、PaSoRiの売り上げアップにもつながりました」(情報メディア事業部 市場開発本部 ビジネスアーキテクト 南 宣吉氏)

今年9月には電子マネー事業者からパソコンに外付けするタイプのリーダライタがノベルティとして配られる予定だ。組み込み型モジュールはタイヘイコンピュータのデジタルサイネージ端末「POCKETTA(ポケッタ)」、シーエスイーの業務用PDA「PIT(ピット)」などにも搭載されている。

Lenovo Corporation(レノボ社)がグローバル市場向けに販売するノートパソコンにモジュールを搭載

また、2月に発売されたオンキヨーの企業向けノートPCには、組込み型のリーダライタモジュールが搭載されており、NFCリーダライタを標準搭載したパソコンの市販は、これが世界初とされている。続けて4月には、Lenovo Corporation(レノボ社)がグローバル市場向けに販売するノートパソコン「ThinkPad/シンクパッド」シリーズの「T410」、「T510」、「W510」に搭載された。

展示会などでは東芝製のTG01をベースとしたNFC携帯電話の試作機を紹介。NFCチップは「NXP PN544」を搭載し、チップはシンガポールのiWOW社が実装している。GSMAが策定したPay-Buy Mobile規格にも準拠しており、「今後はシンガポールでの実証実験を予定しています」と南氏は説明する。

ソフトウェア開発キット(SDK)は、MifareとFeliCa向けを出荷し、4月にはBluetoothとのハンドオーバーを利用したソフトウェア開発キットの発売も開始している。情報メディア事業部 市場開発本部 本部長 森山克彦氏は「すでにSDKは200社以上での採用実績があります」と成果を語る。

ICカードの利用価値はNFC普及後も不変

決済以外での利用領域を拡大する

印刷会社としての顔も持つ同社は、ICカードの利便性を高める観点でもビジネスに取り組んでいる。7月にはコネクトテクノロジーズと提携し、ICカードのオンデマンド発行サービスを発表。10月からの本格展開を目指す。

情報メディア事業部 市場開発本部 本部長 森山克彦氏

「『カードは流通事業者などの店舗の顔』とも言える存在です。しかし、携帯電話に搭載された瞬間に利用頻度も購入金額も下がってしまいます。ICカードの利用価値は高く、必ずしも携帯電話にICカードの機能を集約することがNFCの将来像ではないと弊社では考えています」(南氏)

従来、ICカードの発行には専用の工場で、決められた工程での書き込み処理が行われていた。ここは利用者が直接カードのアプリケーションをダウンロードできる携帯電話に比べて劣る部分だ。同社ではその課題を解決し、事業者や利用者が自ら、ICカードをNFCリーダライタにかざした状態で個人情報を入力し、その場で書き込めるフォーマットを開発した。データの処理はNFC規格のNDEF(NFC Data Exchange Format)仕様に基づいて行われるという。南氏は「この仕組みを使えば、町のDPEショップやオンラインゲームユーザーなどが簡単にカードを発行でき、ICカードの新たな市場を開拓できます」と期待を寄せる。

また、これまで日本ではFeliCaのインフラを中心に非接触ICカードの市場が形成されてきた。

タクシー車内設置型サイネージメディア「タクシーチャンネル」

特におサイフケータイの場合は決済インフラのイメージがあまりにも強いが、「決済以外の活用方法から、結果的に決済に誘導するソリューションを考えていきたい」と南氏は語る。その上で、「例えばパーソナライズドサイネージで自社に関連した広告展開を行い、その結果、決済に結びつける取り組みなどを想定しています」と説明する。

8月2日には日本タクシー広告、テレコムサービス、ソフトバンクモバイル、テレビ東京と共同で、タクシー車内設置型サイネージメディア「タクシーチャンネル」を発表した。同社ではタクシー料金メーターやNFC を活用した運賃の電子決済システムの開発、タクシーチャンネルの番組コンテンツと連動した技術提供を行う。またKDDIが実施するNFCの実証実験でもバックエンドの部分で協力している。

「移動網」と「固定網」を融合したビジネスを展開

NFCのグローバルでの普及は2015年以降?

今後はスマートフォンの普及とともに、TypeBの国民IDカードの発行なども含め、FeliCa以外のインフラが着実に広がっていくとトッパンフォームズでは考える。同社ではスマートフォンの広がりとともに期待される「移動網」と「固定網」の融合をビジネスに取り込んでいきたいとしている。

情報メディア事業部 市場開発本部 ビジネスアーキテクト 南 宣吉氏

「スマートフォンの登場と共にリアルとバーチャルの垣根が徐々に取り払われると思います。例えば、新たな決済方法の創出が考えられます。弊社では決済事業者に対し、そのお手伝いをさせていただくとともに、加盟店開拓やソリューションまで一貫した展開を検討しています」(南氏)

決済以外でも個人の認証方法や電子マネーの利用明細の発行など、新たなビジネス展開につながる領域はまだまだたくさんある。同社では今年から徐々に各アプリケーションをスモールスタートさせていく方針だ。ビジネス展開としては国内とアジアでの活動が中心になるという。なお、NFCで注目されるピア・トゥ・ピアの技術に関しては、「それを直接、弊社の収益に結び付けるのは難しい」(南氏)とのことだ。

NFC全体の広がりについて南氏は、「NFCはFeliCa単体のビジネスとは違い、国内でも海外でもグローバルなプラットフォームとして各プレイヤーがサービスのメリットを享受できます。本格的なインフラとして展開されるのは2015年以降でしょう」との考えを口にする。森山氏もNFCは「必ずグローバルなプラットフォームとして普及する」との見解を示した。

■「FeliCa・NFC最前線」トップページへ

page toppagetop