アメリカン・エキスプレス:消費者支出の展望(3)

2011年2月14日8:34

アメリカン・エキスプレス:消費者支出の展望(3)

消費者支出の傾向

この困難な状況の中で生まれた新たな消費者行動の傾向は、今後10年で小売業界に起こる根本的な変化の到来を告げている。

V-tailing

(バリュー追求)

過去3年間の世界的経済危機により、衝動的な購買から熟慮したうえでの購買へと移行したように、日本人は消費習慣を根本的に見直した。一方で、この新しいタイプの消費者はインターネットを通じて、比較・検討した上で購入している。

「重要とみなすものが変わったことにより、2007年末以降で日本の消費者の好みが変わった」と東京ファッションデイリーのティモシー・シェピス氏は述べている。「彼らにはかつてのようなブランド志向はない。今では彼らはファストファッションブランドで満足であり、高級ブランドや贅沢品はもう重要視されていない」

中央大学の山田教授も同じ意見である。「将来への不安から、両親と同居しているにもかかわらず、パートや派遣で働く女性の消費量はますます減少する傾向にある」と述べている。

これは、経済面と社会面、両方での変化と言える。「安定した収入のある男性と結婚し主婦になることを望む未婚女性がますます増えている」と山田教授はつけ加える。「しかし、定職に就いている未婚男性が少ないため、実現はどんどん難しくなっているのだ」

V-tailing(バリュー・リテーリング)は、前述にあるように、定評ある高級ブランドという従来のステータスをあきらめ、その代わりに手頃な価格を売りにする新しいブランドを選ぶ消費者をうまく利用している。日本の消費者のほぼ4分の3(71%)が自分は価格に対して敏感であると回答したのに対して、自分はブランドネームをみて選ぶと答えたのはそれより少ない33%だった。また、同じく33%が企業・ブランドに安さを期待していると回答した。

ユニクロの店舗(東京・新宿) Uniqlo Megastore by Curiosity, Tokyo

海外のファストファッションブランドの参入がこの市場を開拓している。H&M、Forever21、そして2010年9月に新宿に旗艦店を出店したTopShopなどが挙げられる。TopShopの出店は拡張計画の一部で、今後3年間でさらに15店舗を新しくオープンする予定だ。一方、新宿マルイカレンのような手頃なファッション専門店やユニクロのような手頃なブランドは相変わらず好調だ。2010年8月、アジア最大の小売業者イオンは、ジャスコとサティでトップバリュコレクションという名で衣料品の自社ブランドを立ち上げた。

しかし、ただ安いだけの商品では今日の消費者の期待を満たすことはできない。いま価格に見合う価値に求められるのは、信頼感(50%)、耐久性(48%)、そして高品質(46%)なのだ。「若者はより低品質の商品に目を向けているが、支払額を抑えたいという気持ちはさらに強い」と、シェピス氏は述べている。「では、彼らは品質に興味を持たなくなるのだろうか?それは、ないだろう。ただ、安価で、低品質の商品を購入することを自ら選んでいるのだ」

贅沢品について見直す消費者も増えている。多くの消費者にとって、ブランドネームの重要性は値ごろ感に比べるとかなり低くなる一方、それらを重視する消費者はインターネットを使ってレビューやセール情報などをチェックしている。およそ3分の1(32%)は仲間同士のオンラインレビューが自分の支出に影響すると答えており、16%はネットオークションで買物をした後に商品レビューを書いている。このことが、高級品を扱うオンラインディスカウントショップの増加に拍車をかけており、対象者の26%が贅沢品は主にそのブランドやショップのウェブサイトで購入すると答えている。

「人々は高級ブランドそのものから離れているのではなく、より注意深く選ぶようになっている」とソーズバーグ氏は述べている。「彼らは決して今までのような衝動買いはせず、時間をかけて選んでいるのだ」

GiltやBrands4friends.comなどの高級品を扱うオンラインディスカウントショップは、小売市場で徐々に影響力を持つようになり、高級衣料品、革製品やアクセサリーの購買全体の23~29%が、高級品を扱うアウトレットによって占められている。

2010年8月現在で、招待制のGlamour-Salesは12万人以上の会員を有するまでになっている。その魅力は最大80%割引となる衣料品であり、個々のセールイベントでは最大2万人のオンラインの顧客が集まると言う。2010年9月に『ウォールストリート・ジャーナル』紙が報じたところによると、8月下旬に日本国内最大級のインターネットショッピングモール楽天市場がディスカウントサイトを開設した際、高級腕時計の売上が前月比で45%増加した。

今後10年間、消費者の購入決定プロセスは、これまで以上に慎重かつ合理的になると同時に、より上手にセール情報を入手するようになるだろう。さらに、手頃な価格を求める一方、ブランドにも自分と同じ価値観を持ってほしいと望むようになるだろう。身近なブランドに求めることは、信頼できること(52%)、安価であること(48%)、長持ちすること(25%)、そして環境に優しいこと(25%)である。もし高級ブランドが価格の値下げをしないとするならば、職人の技術や最高級品質の素材などで差別化し、その価値を証明することが必要になるだろう。

トップ3:消費者としてのあなたご自身をどう表現しますか?

・価格重視 (71%)
・ 品質にこだわる (67%)
・ 倹約家 (51%)

消費者ケーススタディー

: V-tailing

タケウチアキコは23歳のDJである。東京の国際色豊かな広尾に両親と暮らしている。アキコは流行に敏感で、彼女の友人たちとは違う、自分独自のスタイルを持っている。3年ほど前にH&MやZARA などが多くの店舗をオープンして以来、アキコはこれらのブランドで衣料品を購入しており、以前のようにデザイナーブランドに直行することはなくなった。

「面白いデザインの服が低価格で買えるので、頻繁に買うこともできるんです」とアキコは言う。「価値と価格の違いは分かっています。だから、気に入っているデザイナーの服と安い服を合わせたりします。」安い店舗で買物をする際、アキコは普段使いのトップス、Tシャツ、家で着る服などを主に買う。

「大切なのは、その服が自分に似合うかどうかです。有名ブランドかどうかは関係ありません。それに、貯金もしたいので買う前によく考えます」とアキコは話す。アキコはこれらのアイテムを、六本木ヒルズやアトレといった店舗で購入したアイテムや楽天市場やYahoo!などのインターネットで購入した高級品と組み合わせる。彼女はジャケット、コート、靴、バッグは高価なものを購入する。「サイズはとても大切です。きちんとサイズが合えばそのほうが長持ちするからです」

アキコは、高級品でも安い服でも衝動買いはしないと言う。まず、インターネットで高級な商品の価格を比較した後、ファッション雑誌とウェブサイトを読む。そして、オンラインで購入することもたまにはあるが、店舗を訪れる。しかし、これほど慎重だからと言って、アキコが服に使う金額が減った訳ではない。「使うお金は増えました。気に入った商品や必要なものを見る機会が増えたからです。セールでお買い得品を見つけたらつい買ってしまうので」

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