アメリカン・エキスプレス:消費者支出の展望(8)

2011年2月16日7:10

アメリカン・エキスプレス:消費者支出の展望(8)

消費革命

Digital Planetは企業が消費者に製品を売る、という一方通行の販売経路を急激に変えつつある。市場の成長に伴い、消費者はオンラインを利用するようになり、さまざまな情報の入手や他者とのつながりから、より力を持った存在となりつつある。

この結果、企業との関係において消費者はより大きな影響力を持つことになった。実際に小売店に行って購入する、といった単純で一方的な関わり方が、今やオンライン上で他の消費者や企業と密接に関わり合うようになっている。他の消費者のレビューを読んだり、共同購入を通じてより安く購入したりするだけでなく、最近では販売する側に回り企業と利益を分け合うこともある。

さらに重要なことは、このような消費者との密接な関与は企業にとっても非常に価値がある、ということである。他の商品と比較したり、レビューを書いたり、時には宣伝や販売にも関わることで、消費者は企業に計り知れないほどの深い洞察を与え、口コミを通じた強力な宣伝担当者として機能してくれるのだ。

先ほどまで見てきた全てのトレンドに関して、以下の2軸のマップに配置することができる。縦軸は「買い物をひとりで行うか、他者(他の消費者や企業)と一緒に行うか」、横軸は「オンラインをどの程度利用するか、しないか」を表している。例えば「YOUnique」は、オンラインとオフラインの両方を使って、
自分にぴったりの製品を見つけることに熱心である。このため、企業との深いつながりを持つことになる。「Eco-sumers」は、より政治や社会と関わっていたいとの考えから、世の中全般に良いと考えられる商品を購入する。一方、「Ginkanomics」に代表される消費者はオフラインであることが多い上に、自分だけのために買いものをするため、一般的には他の消費者や企業と接点を持つことはない。

消費者支出の将来

この章では、小売業界の今後10年間に何が起こるのか、今後のシナリオを形づくる牽引役とトレンドを分析しながら説明する。

Societal Transformation

(社会の変容)

日本は人口統計上においても社会的にも大規模な変化を経験しつつあり、これは小売業界にとって重要な意味を持つものである。新たな市場と消費者が台頭し、企業はターゲットをきちんと定めたうえで商品やメッセージを打ち出していく必要があるだろう。2040年までに、日本の人口統計は変化し続け、その結果、人口構成は今日とは根本的に異なるはずだ。

「2040年までには、日本は65歳以上が35%を占めるずっと小さな国になっているはずだ」とマッキンゼーのブライアン・ソーズバーグ氏は述べている。「これは日本の社会に負荷を与え、消費市場に変化をもたらすという点で非常に重要な意味を持つであろう」。このことが真に何を意味するかを、おそらくSF作家でもない限り、十分に考えたことはないだろう。企業は、高齢化する消費者の要求を満たすために、技術革新、直感的なデザイン、実用的なシンプルさを推し進めることになる。

伝統的な男女の役割が薄れ続ける中で、健康、ウェルネス、ライフスタイル関連の商品は、より若い男性に的を絞ってくるだろう。「日本人男性には2つのタイプがあるようだ。伝統的なサラリーマンタイプと、自分の見た目や服装を気にして化粧までするタイプの若者である」と東京ファッションデイリーのティモシー・シェピス氏は述べている。これまで女性専用だと思われてきた商品とサービスが、増え続ける「草食系」男性消費者にも提供されるようになる。引き続き、こういった男性購買行動が、ステータスのある商品の消費に取って代わっていくだろう。

Shop Different

(購買動機の多様化)

「人々は高級ブランド自体を見放した訳ではなく、これまで以上に注意深く選ぶようになっている」とシースカウト・ジャパンの最高執行責任者マイケル・ケファール氏は述べている。「彼らは決して衝動買いはせず、時間をかけて選んでいる」

経済的な制約や強まる個性、ファストファッションの台頭により、これまでのような高級品の消費時代は終わりを迎えた。「消費者が見栄えのよい商品が低価格で入手できることに気付いた今、この流れは逆戻りしないはずだ」とマッキンゼーのブライアン・ソーズバーグ氏は述べている。

個性的なものやよりパーソナルなものを求める消費者の要望はますます大きくなり、その傾向は企業にとって商品と小売スペースの双方に影響を与えるだろう。そのような中で、従来のデパートは若い世代にこれからも受け入れられるために、ファストファッションブランドを取り入れるなどして、競争力を維持するために柔軟な対応をしていく必要があるだろう。

次第により成熟、洗練されていく消費者市場において、環境意識は引き続き高まりを見せるだろう。高級なブランドネームは消費者を惹きつけるにはもはや不十分で、表面的ではない商品の倫理的な価値観を反映することがブランド側に求められるようになってくるだろう。シースカウトの『ECOジャパン2010』レポートからマイケル・ケファール氏が発見したことは、選択肢を制限するのではなく、より多くのエコ商品が選択肢として提示されるべきであろうということだ。「なぜなら、それは消費者自身が選んだこと、意識して決めたことを意味し、今後の支出態度に影響するからである」

Digital Retailing

(オンラインショッピングの台頭)

オンラインショッピングは、特に今後10年間で市場でのシェアを拡大しながら、消費者行動に革命的な影響を与え続けるだろう。オンラインのディスカウントショップ、価格比較サイト、ソーシャルメディアも小売業界を大きく変えていくだろう。場所を問わずインターネットにアクセスできるスマートフォンがデジタルと現実の境界線をあいまいにし、お店に居ながらにして豊富な情報、レビュー、アドバイスに瞬時にアクセスできるようになる。

そして、今後10年間でスマートフォンは電子財布としても機能するようになるだろう。「オンラインとオフラインのショッピングは、ますます境界がなくなるだろう」とマッキンゼーのブライアン・ソーズバーグ氏は予測する。

「家にいながらオンラインで日用品を購入することで、実際に店舗で購入しているような気分になる。同時に、実店舗で食料品を購入する際には、スマートフォンや他のテクノロジーやGPS技術により、消費者が今店内のどの位置にいるかに応じて、クーポン券が送られてくるようになるだろう」

企業は、このオンラインとオフラインの「ハイブリッドな世界」で得られる膨大な消費者情報を、より賢く利用するようになる。そして、その情報と分析により、一人一人に最適化されたマーケティング活動を促進していくだろう。消費者とのつながりを維持するためには、実店舗のみの小売業者は差別化できるショッピング体験を消費者に提供することに焦点を絞る必要があるだろう。

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