マスターカード・ワールドワイド 日本地区 社長 ロバート・ルートン氏インタビュー

2013年7月1日8:00

3年間で「MasterCard PayPass」加盟店を41万店開拓へ
ウォレットサービスの強化、オンライン決済の浸透も狙う

マスターカード・ワールドワイド(MasterCard)は、「MasterCard PayPass」を利用できるNFC対応の非接触決済端末を2013年第2四半期より3年間で全国に41万台設置する計画を発表した。同社では、三菱UFJニコス、三井住友カード、ユーシーカード、オリエントコーポレーションによってMasterCard PayPassのインフラを整備するという。その経緯について、日本地区 社長 ロバート・ルートン氏に話を聞いた。

マスターカード・ワールドワイド 日本地区 社長 ロバート・ルートン氏インタビュー

4社のアクワイアラを中心に端末の設置を進める
NFC決済はFeliCaベースの決済と共存へ

――国内では、浦安市舞浜にある「イクスピアリ」や横浜・みなとみらいの「コレット・マーレ」などでMasterCard PayPassが使われてきましたが、41万台の設置を目指すことになった経緯からお聞かせください。

マスターカード・ワールドワイド 日本地区 社長 ロバート・ルートン氏

ロバート・ルートン(以下:ルートン):NFCの非接触型の支払いに進化してきた背景として、もともとカード決済のテクノロジは、エンボスから磁気ストライプ、接触IC・EMVカード、NFCという流れがありました。従来は安全性やセキュリティという観点で進化してきましたが、今後は、NFCによりそれ以外の大きなメリットを得ることができると考えています。

2013年第2四半期より3年間で全国に41万台設置するという数字については、今後数年後を想定したとき、スマートフォンなどの浸透により、次世代型の支払い手法を実現するに十分なクリティカルマスに到達すると見込んでいるからです。そのためには、NFCのアクセプタンスを実現できていないと、次世代型の支払いにつなげることはできません。今回、4社(三菱UFJニコス、三井住友カード、ユーシーカード、オリエントコーポレーション)がパートナーとして挙がっていますが、パートナーの皆様と私達MasterCardの考え方も似通っていることから、3年間展開した場合、台数的にどうなるかを目標設定し、41万台となりました。もちろん、ビジネスなので、41万台以上の設置を目指していきたいですし、4社以外のアクワイアラとも取り組んでいきたいと思っています。

――他ブランドでも非接触決済の展開を発表していますが、国内の機運が高まってきたと言えるのでしょうか?

ルートン:私たちはMasterCardが世界的にこの分野のリーダーであると自負していますが、非接触IC決済の機運が高まる中で、業界全体として同じように進んでいくと思います。将来的に、非接触の支払いは、店舗だけではなくオンラインの支払いとしても当たり前になっていくと考えています。

今後は、MasterPassとして提供するより広い概念をもったデジタル決済サービスの中で、MasterCardが主体となるというよりは、パートナーが展開するモデルの中で、非接触型の支払いを促していく方向になります。MasterCardの役割としては、オンラインやPOSといったインターフェースに関わらず、パートナー側が消費者向けに発行しているウォレットが、より円滑に決済で使えるようなネットワークにしていく方針です。

――国内ではFeliCaベースの決済が普及していますが、今後、NFCも同様に広がりが期待されます。

ルートン:FeliCaは、SuicaやPASMOをはじめ、交通機関などの利用で浸透しています。NFCはFeliCaにとって代わるものではなく、共存していくものです。やはり、交通機関などの分野では、FeliCaが継続して使われると思いますが、MasterCard PayPass等のNFC決済はスマートフォンがインテリジェント化するなかで、消費者側のさまざまな体験が大幅に向上する魅力を持っています。NFCはロイヤリティやクーポンなど、付加価値のある体験ができるような、別の世界に誘導することができます。グローバル対応も含めて、いろいろな可能性が秘められていると思います。

3段階に分けてサービスの浸透を図る
ロイヤリティサービスやクーポンで付加価値を提供

――国内でサービスを展開する上でイシュイング、アクワイアリングを展開すると思いますが、どのような形で推進されていくのかをお聞かせください。

デジタル決済サービス「MasterPass」のリアル決済のイメージ

ルートン:まず、弊社が発表したデジタル決済サービス「MasterPass」は、今まであった物理的なネットワークから、非接触型で、店舗内の決済、Web上でのスマートデバイス決済が可能になります。コンタクト型からコンタクトレスに移行しますが、その際に3つの大きなポイントがあると考えています。1つはPOSについて、2つめはスマートフォン型のウォレットの発行について、3つめはスマートデバイスにおけるワンクリック決済です。

NFCをはじめとした非接触決済が普及しているオーストラリア、米国、カナダ、イギリスといった国々は、パートナーがウォレットを発行し、支払いを可能にさせるネットワークが備わっています。日本の場合は、FeliCaの利用が普及していたので、スマートフォンが出てくるまでは、NFC決済の必要性があまりなかったため、そういったインフラが整っていませんでした。

最初の段階はイシュイングとアクワイアリングの強化です。2段階目はパートナーがMasterPassを発行できるウォレットの環境整備、3段階目はオンライン上でのアクセプタンスの実現であり、ステップを踏んで実現させていく予定です。

――まずは、アクワイアリングから展開し、イシュイングとしての展開はその後ということになるのでしょうか?

ルートン:まずは加盟店で物理的なアクセプタンスを築いて、海外からきた方がサービスを利用できることに加え、日本でも徐々にイシュイングがスタートする形を想定しています。

現行は、MasterCardカードを持って買い物をした場合、パートナーが手にできる情報はカード番号とセキュリティコード、金額、加盟店情報に限られており、その人の性別や年代などを保有できていませんでした。ウォレットの場合は、パートナーのサービスに登録することにより、あらゆる情報がその中で留められるようになります。こういった情報を活用して、将来的にはパートナーがロイヤリティサービスやクーポンを付加価値として加えられるようになると思います。

――すでに海外でウォレットサービスを展開している「ISIS」や「Google Wallet」は苦戦していると言われていますが、ウォレットサービスは今後日本で普及すると思われますか?

ルートン:現状、国内のスマートフォンの普及率は33%と言われておりますが、今後はすべてが置き換わり、その多くにNFCが搭載されると思います。普及の速度についてはさまざまな意見がありますが、MasterCardとしては予測通りの伸び方だと捉えています。

各社がアプリケーションの開発やリワードプログラムなどを提供することにより、サービスに付加価値が加わります。「iPhone」でもさまざまなアプリが開発され、消費者に受け入られたように、何かしらの段階でNFCに傾くと思います。それが備わってウォレットを消費者が使う流れになると見ています。

将来的には小額から高額まで幅広い利用が見込める
ウォレットの普及は2~3年後を想定

――現状、国内の非接触決済は小額での利用が中心ですが、今後は小額から高額まで含めて利用されるようになるのでしょうか?

ルートン:小額なところからある程度の金額までは、今後もチップベースのFeliCaが利用されていくと思います。ただ、ある程度高額になるとNFCが利用されると思います。中間の金額はオーバーラップすると思いますが、NFCを使う中でより多くのポイントが貯められたり、ある程度のリワードが受けられる場合、小額から高額まで利用されると考えています。場合によっては、1つのカードでFeliCa機能とMasterCard PayPassを使い分ける時代も来るかもしれません。例えば、交通機関でカードを使う時にはFeliCaを利用し、それ以外の買い物ではMasterCard PayPassを使うといったことも考えられると思います。もちろんそれがモバイルで実現できればなおよいでしょう。

――プリペイドやデビットのMasterCard PayPassのニーズは出てくると思いますか?

ルートン:クレジットカードだけでなく、デビットやプリペイドのニーズはあると思います。カードをかざすまでの経路は違うだけで、それ以降の取引は同様です。NFCはスマートフォンのスマートな部分を生かしていける強みがあります。

私たちは早々に導入のテストを実施していましたが、それは当時日本で利用されていたソリューションよりも多少サービスとして上回るものでした。今の日本はスマートフォンも普及してきていますので、NFCを導入するにふさわしいマーケットが構築されようとしています。今までは、非接触サービスが利用できる環境はありましたが、それを何とマッチさせるのかが見えていませんでしたが、その土壌ができつつあります。

――オンライン決済やワンクリック決済が浸透するのはいつごろだと思われますか?

ルートン:スマートフォンのウォレットが普及するのは、少なくても今年ではなく、2~3年先であると見ています。そのため、オンライン決済やワンクリック決済が浸透するのはさらにその先であると考えています。

――最後に今後の意気込みをお聞かせください。

ルートン:決済の方法は日々進化していますが、今は次世代型の決済に移行するスタート時期になります。今後は、進化の速度は加速すると思います。各国の状況を見ると、ある程度浸透すると、そこからは急激に伸びています。まだ日本のマーケットは現金が主流であり、なかなかカードの利用は伸びませんでしたが、消費者も現金は銀行に預けて電子決済を利用する方向に進んでいくと思います。これは、一朝一夕でできるわけではなく、ある程度の段階を踏んだうえで進んでいくと思いますが、グローバルで見ても日本の市場は大きく、可能性も秘めているので、将来的にはNFCが浸透すると考えています。

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