ポイント業界戦国時代

2014年6月6日 8:00

ポイント戦国時代

株式会社ポイ探 代表取締役 菊地崇仁

ポイント業界再編の幕開け

2006年、日本発のポイント交換案内サイト「ポイ探」が誕生した。ポイントブームの到来だ。2007年、3月にPASMOサービスが開始、4月にはnanacoとWAONのサービスが開始され、電子マネーが最も注目された年となった。2008年、長引くデフレもありポイントブームがピークを迎える。2009年以降は、利用者のポイントリテラシーも向上し、徐々にポイントブームも落ち着いていった。

そんな中、2012年6月にポイント業界を大きく変えるニュースが飛び込む。2013年春頃からYahoo!ポイントが廃止され、Tポイントに統合すると言うのだ。Yahoo!ショッピングで貯まるポイントがTポイントになり、Yahoo!ショッピングでTポイントを使えるようになる。この1つの発表が、2013年以降のポイント業界を大きく再編させることとなる。

なぜ、このニュースがポイント業界を揺るがすニュースとなったのだろうか。

以下のポイント交換図を見て欲しい。これはYahoo!ポイントとTポイントの統合が発表される前の図となる。”“はポイントを相互に交換できる事を、”“は一方にポイントを交換できる事を表している。

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図1.Yahoo!ポイント、Tポイントの統合が発表される前のポイント交換図

「Yahoo!ポイント・JAL・Pontaポイント」連合に対して「楽天スーパーポイント・ANA・Tポイント」連合という構図となっている事がわかるだろう。Yahoo!ポイントに対して楽天スーパーポイントが、JALマイルに対してANAマイルが、Pontaポイントに対してTポイントが、というように、それぞれのライバル企業が、それぞれ別陣営としてバランスをとってきた。

しかし、Yahoo!ポイントとTポイントは別陣営にもかかわらず提携する。当然、大きくバランスが崩れ、一気にポイント業界の再編が起こる事になったのだ。

Yahoo!ポイントとTポイントが統一された場合は以下のようなポイント交換図となる。

図2.Yahoo!ポイント、Tポイントの統合が行われた場合のポイント交換図

図2.Yahoo!ポイント、Tポイントの統合が行われた場合のポイント交換図

そのまま提携が行われた場合、2つの問題が出てくる。

1つ目は、Tポイントを介してJALマイルとANAマイルの相互交換ができるようになる。そのため、発表から約半年後にYahoo!ポイントとJALマイルの相互交換終了が発表された。

2つ目は、nanacoポイントとYahoo!ポイントの相互交換。Tポイントの最大の加盟店はファミリーマートだ。Yahoo!ポイントがTポイントに切り替わると、nanacoポイントとTポイントの相互交換が可能となる。ファミリーマートで貯めたTポイントをセブン-イレブンで利用、逆も可能となるため、こちらも2013年3月に終了が発表された。

Yahoo!ポイントとの提携終了後のnanacoポイントは宙に浮くことになる。結局、別陣営のANAとの相互交換に落ち着いた。

図3.2013年4月1日時点でのポイント交換図

図3.2013年4月1日時点でのポイント交換図

ネットとリアルの融合で共通ポイントの再編も

ポイント交換先の見直しはポイント業界再編の序章にすぎない。Yahoo!ポイントがTポイントに切り替わったことで、ネットで貯めたポイントをリアルで使う、リアルで貯めたポイントをネットで使うということが可能となった。

Yahoo!ポイントのライバルとしては楽天スーパーポイントとなるが、この発表があるまでは、楽天スーパーポイントがYahoo!ポイントを圧倒していたと言えるだろう。

2013年4月時点で、楽天市場の加盟店舗数が約4万店、Yahoo!ショッピングの加盟店が約2万店。ポイントキャンペーンを毎日のように行う楽天はポイントが貯まりやすく、加盟店が多ければポイントは使いやすい。貯めやすさ・使い安さ、どちらをとっても楽天スーパーポイントに分があるだろう。現に、ポイ探で毎年行っている「ポイントオブザイヤー」では、楽天スーパーポイントが5連覇を達成している。

しかし、Yahoo!ショッピングの加盟店に加え、Tポイントの加盟店がポイントの利用先として使えることになった。2012年6月時点でTポイント加盟店は4万7339店。Yahoo!ショッピングの加盟店と合計すると約6万7000店での利用が可能となる。一気に楽天スーパーポイントよりも使いやすいポイントとなったのだ。

筆者は雑誌などの取材の時に必ず言うことがある。「貯まりやすいポイントを貯めるのではなく、使いやすいポイントを貯めるべきだ」と。どんなに貯まりやすいポイントがあっても、使える先が少ないと貯めるメリットは無い。

使いやすさでTポイントの後塵を拝する事となった楽天は、2013年3月、共通ポイントサービスへの参入を発表し、再度使いやいポイントNo.1を目指すこととなる。Tポイントと楽天スーパーポイントの全面対決の開始だ。

この争いに取り残された共通ポイントがある。Pontaポイントだ。

Pontaポイントに触れる前に、じゃらん×ホットペッパーポイント(現リクルートポイント)に触れておく必要がある。

2013年3月にリクルートのオンラインショッピングサイト「ポンパレモール」がオープンした。楽天市場やYahoo!ショッピングと同じタイプのショッピングモールだが、商品購入100円につき3ポイントと2社よりもポイント還元率を高くし2社の追撃を図る。4月にはリクルートポイントに名称を変更し、5月に還元率2.0%のリクルートカードプラスを投入。貯まりやすさを武器に、楽天市場、Yahoo!ショッピングの追い上げを開始する。しかし1年経った2014年4月時点でポンパレモールの加盟店は約1000店舗。楽天市場、Yahoo!ショッピングと差は開くばかりだ。

先に書いたとおり、”貯まりやすいポイント”よりも、”使いやすいポイント”が重要ということがわかる事例だろう。還元率が高くても、使い勝手が悪いポイントを貯める者はいない。

ネットでも貯まり・使えるようになりたいPontaポイントと、使いやすいポイントに生まれ変わりたいリクルートポイントが提携するのは当然の流れといえる。2014年夏頃から両社のポイントの相互交換が開始し、2015年春頃からリクルートポイントはPontaポイントに統合される。

「Yahoo!ポイント・JAL・Pontaポイント」vs「楽天スーパーポイント・ANA・Tポイント」という構図から「Tポイント(Yahoo!ポイント)」vs「楽天スーパーポイント」vs「Pontaポイント(リクルートポイント)」と言う共通ポイントを軸とした構図に変化した。

図4.共通ポインをが主軸に

図4.共通ポイントが主軸に

ケータイ会社のポイント動向

今まで独立していたケータイ電話会社のポイントにも再編の波が来る。ドコモポイントは2014年4月以降、ANAマイルへの交換を終了し、JALのマイルと相互交換を開始。同時に、ドコモポイントの付与率を改悪するが、ドコモのクレジットカード「DCMX」契約者を優遇する方針を打ち立てる。


ソフトバンクポイントは2014年7月以降に通信料の支払いで貯まるポイントがTポイントへと切り替えとなる。ケータイの端末・料金等、自社でしか使えないポイントを付与するより、還元率が悪くなるが、どこでも利用可能なTポイントに変更する事で、顧客満足度を上げる作戦に出たのだろう。

また、auは2014年2月「au WALLET構想」を発表。2014年5月から電子マネー「au WALLETカード」を提供し、ケータイの通信料だけでなく、「au WALLETカード」を利用することで、リアル店舗でもポイントを貯める事が可能となった。貯まる「WALLETポイント」は再度au WALLETにチャージ可能のため、使いやすいポイントにした形だ。

au WALLETの利用可能店舗数は約3810万店舗。ソフトバンクモバイル同様、閉じたポイントから、使い勝手の良いポイントへの切り替えとなる。

図5.共通ポイント・ケータイ会社のポイント動向

図5.共通ポイント・ケータイ会社のポイント動向

Yahoo!ポイントのTポイント統合の発表から、共通ポイント、ケータイのポイントが大きく変化した。今回の再編の鍵は「使いやすいポイントへの切り替え」だ。使いやすいポイントの筆頭とも言える、共通ポイント・電子マネーのポイントが今後のポイント業界を牽引することとなるだろう。

菊地 崇仁(きくち たかひと)

1998年に法政大学工学部を卒業後、同年日本電信電話株式会社(現NTT東日本)に入社。社内システムの開発、Lモードの料金システム開発、フレッツ網の機器検証等に携わり2002年に退社。同年、友人と共に起業し、システムの設計・開発・運用を行う。2006年、ポイント交換案内サービス・ポイ探の開発に携わり、2011年3月代表取締役に就任。ポイント探検倶楽部に掲載されているポイントは約230種類。ポイントやマイルを中立の立場で語れる数少ない専門家として知られる。

三児の父であり家計のやりくりをすべて担当。ポイントのみならず、クレジットカードや保険なども守備範囲で、近年は投資にも挑戦している。著書は「新かんたんポイント&カード生活(自由国民社)」、「得するポイント(カード)の貯め方・使い方(日本監督協会)」。運営サイトは「ポイント探検倶楽部(ポイ探)」「株式会社ポイ探」「菊地崇仁オフィシャルホームページ」等。

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