大阪市が生活保護費の一部をVisaプリペイドカードで支給

2015年3月20日8:34

大阪市が生活保護費の一部をVisaプリペイドカードで支給
生活保護費の受給者が自ら生計の状況を把握可能

大阪市は、生活保護費の支給方法について、家計管理や金銭管理が必要な人への支援ツールとして、2014年12月全国で初めてプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル的に実施すると発表した。半年から1年程度のモデル実施の状況を検証し、特定業種に対する使用制限や1日あたりの利用限度額を設けるなど機能追加も検討している。

三井住友カード、富士通総研と協力して実施
モデル期間中は一律月額3万円をチャージ

大阪市のモデル事業は、三井住友カード、富士通総研の協力を得て実施。生活扶助費の一部(3万円)をプリペイドカードにより支給することで、受給者が「利用履歴」を確認することができ、自らの支出の状況が把握可能となる。

大阪市役所では、職員が現場から業務改善や新たな取り組みを提案する「職員提案制度」がある。2010年には電子マネーによる生活保護費を支払うことの提案があり、担当部局において実現可能かどうか検討を行った。しかし、当時はインフラ整備の課題で広く利用できる環境になく、大阪市独自のインフラを整備して実施する場合には膨大な費用がかかることや、大阪市から一括チャージができないといった問題があり実施は見送られた。こうした中、Visaの既存のインフラを利用したプリペイドカードによる生活保護費の支払い方法について富士通総研から提案を受け、その内容が実施可能であるかの検討を行い、今回のモデル事業の発表に至った。

平成25年12月の生活保護法の改正により、収入、支出、その他生計の状況を適切に把握することが受給者の責務として規定された。大阪市福祉局 生活福祉部 保護課の担当者は、「プリペイドカードならば自動的に利用履歴が残り、自らいつでも確認することができるので、簡易な家計簿として利用していただければと考えています。また、計画的な家計管理が困難な方もいらっしゃり、モデル事業では実施しませんが、事業者の提案では1日当たりの利用上限額の設定も可能とのことで、各種制限には慎重な検討が必要ですが家計管理が必要な人に支援ツールの1つとして使っていただければと考えています」と説明する。

大阪市では、生活保護受給者への家計管理支援は担当職員(ケースワーカー)が行うが、助言等行う際に受給者が毎月何に使っているか把握することが困難であった。プリペイドカードの利用履歴については必要に応じて生活保護法の調査権に基づき照会が可能であり、それらを基に助言等が可能となる。

現在、大阪市では生活保護受給者の9割以上は銀行振り込みとなっているが、残りの1割弱は区役所の窓口において現金で給付を受けている。大阪市の各区役所の窓口では、給付初日に受給者の多くが訪れるため、現金の受け渡しなど、職員の負荷がかかっていたことも事実である。

市民等からは「生活保護受給者へは米や衣服などを現物で給付するべきである」等の意見もあるが、現実的には実施は不可能であるとのこと。プリペイドカードは現金と同じ価値の商品を購入できる。例えば、大手のスーパーであれば多くの店舗でクレジットカードのインフラが利用可能だが、小規模店舗や飲食店等では未導入のところも見受けられる。担当者は「モデル事業の中で小売店や利用者から要望があれば、事業者により決済端末設置の設置案内などが行われるのではないか」と話す。

また、高齢者等が持ち帰り困難な重たい物(例えば米や飲料水など)やかさが大きくなる物(例えばトイレットペーパーなど)を購入する、また、就業時間の関係で小売店の営業時間帯に来店が困難な場合もあると考えられるが、今回のプリペイドカードの取り組みはインターネットサービスも利用可能であり、購入条件によっては送料が無料で配達される場合もある等のメリットがある。

カード紛失の際はスマホやPCからロック可能
2,000人程度の利用を想定

仮にカード紛失した際は、本人がスマートフォンやPCなどから利用ロックすることが可能だ。その時点で残った金額については、再発行をすることで残額を利用することができる。

なお、将来的に各個人の入金額を変更するのはどの程度の対応ができるかは未知数となっている。また、モデル実施ではVisaブランドのみだが、今後、他ブランドなどから事業提案があればカードブランドを選択できるようにする等の検討もするという。一方、毎月引き落とされる光熱水費等の収金代行等、プリペイドカードが利用できないケースもあるため、今回の取り組みでは現金による給付がなくなることはないそうだ。

モデル事業の実施体制
モデル事業の実施体制

「今回は、モデルケースでは、3社協定でそれぞれの役割分担で発生するコストはそれぞれが負担することとしています。三井住友カードにとってはビジネスモデルの1つと考えられてのご提案だったと思いますが、大阪市はあくまでも現行制度を変えていくための取り組みと捉えています。なお、大阪市から受給者にお渡しする生活保護費自体は変わりません」(担当者)

現在、大阪市では約15万人の生活保護受給者がいるが、モデル事業利用者は2,000人程度を想定。カードの券面や券種については、受給者の心的な負担を考慮して公開しない予定だ。担当者は、「今後も公開する予定はない」としている。モデルケース後は、利用状況や富士通総研の報告書等を踏まえ、今後の展開について検討を進めていく予定だ。

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