モバイル決済サービスを強化するMasterCardの取り組みは?

2015年12月7日8:00

「MDES」採用のイシュアは順調に増加し、MasterPassとの融合もスタート
店舗のオムニチャネルをサポートするロイヤリティ・ミドルウェアを発表

世界中でモバイルを活用した新たな決済サービスが生まれているが、MasterCardでは、「マスターカード・デジタル・イネーブルメント・サービス(MDES:MasterCard Digital Enablement Service)」や「MasterPass(マスターパス)」により、安全で、利便性に優れたモバイル決済サービスの普及を目指している。また、モバイルを活用したウォレットサービスにおいて、消費者が決済とポイントやクーポンを連携して利用できるロイヤリティ・ミドルウェアも発表した。

MDESはグローバルで数百のイシュアが採用
アジアでは香港やシンガポールで採用が進む

MasterCardでは、トークンを生成し、スマートフォンやサーバへ書き込む機能「MDES」をイシュア(カード発行会社)に提供している。すでに、Appleの「Apple Pay」、Samsungの「Samsung Pay」、Googleの「Android Pay」において、クレジットカードやデビットカードの情報をトークン化し、別の番号に置き換えて利用するサービスが採用されている。現在、米国や英国などで数百のイシュアがMDESを利用しているそうだ。

MasterCard デジタル・テクノロジー・グローバル・センター ジェネラル・マネージャー フィリップ・イェン(Philip Yen)氏は、「アジアでもシンガポールや香港でMDESを活用する動きは出てきています」と説明する。シンガポールではIDA(Infocomm Development Authority)が推進する国家プロジェクトにおいて、キャリアのStar Hub、鉄道会社のEZ-Link、銀行のDBSとともに3年前までパートナーシップを組み、SIMベースのソリューションを展開していたが、同国でもトークン化と「HCE(Host Card Emulation)」の方向に向かっているという。現在、「シンガポールにおいて、ダイレクトに大手銀行と話を進めています」と、同氏は話す。MasterCardでは、グローバルベースで、イシュアが提供するモバイルNFCサービスはHCEに移行していくとみている。

MasterCard デジタル・テクノロジー・グローバル・センター ジェネラル・マネージャー フィリップ・イェン(Philip Yen)氏

MasterCard デジタル・テクノロジー・グローバル・センター ジェネラル・マネージャー フィリップ・イェン(Philip Yen)氏

 

デジタル決済サービス「MasterPass」は25カ国で採用
25万以上の店舗で利用でき、日本での展開も開始

また、2013年2月25日に発表したデジタル決済サービス「MasterPass」は、利用者が事前に複数のクレジットカード情報や住所をアカウントに登録することで、対応加盟店での決済を簡易に実現可能なソリューションとなる。オンラインでの「チェックアウトサービス」、モバイルをカードの代わりに利用できる「ウォレット・サービス」、クーポンやポイントなどロイヤリティサービスを格納できる「高付加価値サービス」で構成される。現在は、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、チェコ、フランス、ドイツ、香港、ハンガリー、インド、イスラエル、イタリア、韓国、ニュージーランド、ポーランド、ルーマニア、ロシア、シンガポール、南アフリカ、台湾、トルコ、アラブ首長国連邦、アメリカ、イギリスで展開されている。また、使用店舗は25万以上となっており、今後は日本での展開も期待される。

「日本では、すでにさまざまな決済サービスが展開されているため、普及に時間はかかると思います。ただし、ユーシーカードが積極的に展開していただいていますので、成長する余地はあります」(フィリップ・イェン氏)

MasterCardでは、MasterPassとMDESの融合についても力を入れている。MasterPassはオンラインでの支払いを中心に利用されているが、PAN(カード番号)をトークン化することにより、オンラインでも安全な取引が実現可能だ。Apple PayやSamsung Pay、Android Payといったコンタクトレスペイメントに加え、オンライン決済においてもトークナイゼーションをベースに展開することで、店舗、消費者双方にメリットがあると考えている。フィリップ・イェン氏によると、ある先進国ではMasterPassとMDESの融合が進んでいるそうだ。

店舗での決済とポイントやクーポンとの連携をシームレスに
Ingenico、Spire Payments 等に加え、日本の決済端末への対応も発表

さらに、MasterCardでは、2015年11月17~19日までフランス・パリで開催された「CARTES SECURE CONNEXIONS 2015」のIngenico(インジェニコ)ブースにおいて、店舗の決済端末やPOS、消費者のアプリ双方が利用できるロイヤリティ・ミドルウェアのデモを実施した。クーポンやロイヤリティカードを利用して、1回もしくは2回、NFCスマートフォンを決済端末にタップすると、その時点でクーポンによる割引が適用される。また、貯まったポイントを何ポイント使うかを消費者は選択できる。店舗からは、デジタルクーポンを提供することで、再来店を促すことが可能だ。

ロイヤリティカードを格納したウォレット

ロイヤリティカードを格納したウォレット

決済と同時にクーポン利用分の料金が差し引かれる

決済と同時にクーポン利用分の料金が差し引かれる

ロイヤリティ・ミドルウェアは、MasterCardが提供するミドルウェアの世界規格であり、据え置きやモバイル等、さまざまな端末に対応し、なおかつセキュリティも担保されているという。

なお、「CARTES SECURE CONNEXIONS 2015」で実施したデモでは、Ingenicoグループの「Telium Tetra」のマーケットプレイスから、ロイヤルティサービスが利用できるアプリケーションをダウンロードした。決済端末としては、Spire Payments や PAX、eThor、Newland に加え、日本のパナソニックの対応も発表されている。

アプリをダウンロードした決済端末(Ingenico)

アプリをダウンロードした決済端末(Ingenico)

 

※取材は2015年11月17~19日までフランス・パリで開催された「CARTES SECURE CONNEXIONS 2015」のIngenicoブースにて

この記事の著者

株式会社TIプランニング代表取締役 池谷 貴

株式会社TIプランニング代表取締役 池谷 貴

2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト運営などのサービスを手掛ける株式会社TIプランニングを設立。現在は、ポータルサイトとして「payment navi(ペイメントナビ)」「PAYMENT WORLD (ペイメントワールド)」を運営しています。
書籍の発行、執筆や講演など幅広く行っています。 ツイッター/フェイスブック

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