独自のウォレットから汎用サービスまでNFCモバイル決済をワンストップに支援(ジェムアルト)

2016年3月25日10:01

デジタル化を進め、カードのビジネス同様にモバイルシフトを図る

これまで世界各国のカード発行会社をサポートしてきたジェムアルト。ここ1~2年、Apple Pay、Samsung Pay、Android Payなど、世界のモバイルペイメントが大きな変化を見せる中、複数のテクノロジをサポートする体制を整えることでカードイシュアをサポートしている。ジェムアルト モバイル・フィナンシャル・サービスシニア・ヴァイス・プレジデント Jean-Claude Deturche氏に、同社のモバイルペイメントの取り組みについて、話を聞いた。

どのブランドの決済でも提供できる体制を整える
ローカルな支払いまで幅広くサポート

――ジェムアルト様は、これまでNFCモバイルペイメントに深くかかわられてきましたが、現在の状況からご説明ください。
Jean-Claude Deturche(以下:Deturche):近年はデジタル化が進んでいますが、これまで銀行(カード発行会社)はテクノロジにそれほど精通してきませんでした。現在、Visa、MasterCard、中国銀聯といった会社がデジタル化に積極的に取り組んでいますが、カード発行会社が本来行うべきビジネスがほかのプレイヤーによって浸食されていく可能性があります。例えば、Apple PayやSamsung Payでは、流れとして国際ブランドの取り引きとなります。また、モバイルオペレーターも同様で、彼らがコントロールできない状況となりつつあります。

そのため、ジェムアルトでは、Apple PayやSamsung Payといった決済に加え、カード発行会社が独自のサービスを提供する場合も含め、サポートしています。つまり、カード発行会社が独自のサービスを提供し、また、汎用のサービスについても自由に選択できます。ジェムアルトはテクノロジ・プロバイダとして、どのブランドでもサポートできる体制を整えています。

弊社の「Allynisトラステッド・サービス・ハブ(TSH)」は、カード発行会社にモバイル決済サービス開始への支援を行うワンストップの接続サービスとなり、1つのコネクションで提供するサービスを選択できます。ローカルな銀行と契約する際、決済は現地で行われるため、それもサポート可能です。

ジェムアルト モバイル・フィナンシャル・サービスシニア・ヴァイス・プレジデント Jean-Claude Deturche氏、同社 日本・南アジア地域 ペイメント 本部長 西健治氏

ジェムアルト モバイル・フィナンシャル・サービスシニア・ヴァイス・プレジデント Jean-Claude Deturche氏、同社 日本・南アジア地域 ペイメント 本部長 西健治氏。「日本では、ローカルでのカード発行会社とのやり取りは大日本印刷に行っていただき、ジェムアルトはテクノロジ・プロバイダとしてサポートしています」と西氏は説明


複数のサービスへの対応で銀行がユーザーを幅広くカバー
キャリアによるソリューションの魅力が下がる

――例えば、銀行ではSIMとHCE(ホスト・カード・エミュレーション)を併用したいというニーズはでてきているのでしょうか?
Deturche:市場にはさまざまなテクノロジがあり、1つに固執するケースは考えられなくて、カード発行会社も複数のテクノロジやサービスをサポートしないと彼らの持っているお客様のポートフォリオをカバーできません。1年半前にApple Payがスタートし、ユーザーエクスペリエンスの良さもあり、成功事例になりました。これにより、多くのカード発行会社がサービスのデジタル化に本腰を入れ始めました。

――その一方でこれまでモバイルNFCペイメントはキャリアを中心に行われてきましたが、その構図が崩れてきました。
Deturche:モバイルオペレーターはこれまで、カード発行会社に対してアグレッシブすぎました。かつて、モバイルペイメントにおいて、カード発行会社は他の選択肢がそれほどありませんでしたが、それが増えた中で、キャリアによるソリューションの魅力が下がっています。そのため、モバイルオペレーターは、もう少しカード発行会社側に歩み寄る必要があるでしょう。

海外では、英国やスペインのボーダフォン(Vodafone)、フランスのオレンジ(Orange)がカード発行会社側に歩み寄っており、歩調を合わせればキャリアが生き残っていくチャンスは十分あると感じています。

モバイルウォレットのイメージ

モバイルウォレットのイメージ

――たとえば、NXPがカード発行会社のアプリケーションと同社のセキュア・エレメント(Secure Element)「PN66T」とのやり取りをシンプルにする「セキュア・エレメント・マネジメントサービス」を提供されるように、コンペチターも増えてきました。
Deturche:部分的なコンペティションではありますが、弊社のTSHはセキュア・エレメントに依存しないソリューションであるため、それを提案し続けることでより多くのお客様をターゲットにできます。NXPは彼らのチップのターゲットになりますが、弊社はアプリケーションの鍵の管理など、もう1つ上のレイヤーを含め、より多くをカバー可能です。当然、マーケットが大きくなればコンペティションが必ず存在します。今後は、他のサービスも出てくるかもしれませんが、弊社のサービスはすべて包括的にカバーできるのが特徴です。

クラウドベースの決済でMasterCardからすべての認定を取得
TSHはヨーロッパとアジアからの引き合いが多い

――クラウドベースの決済において、MasterCardからすべての認定を取得した初のモバイル決済ベンダーとなりましたね。
Deturche:トークナイゼーション、CBPサーバープラットフォーム、決済ソフトウェアと、世界で初めてフルセットで認定を取得できたことにより、続けてきた努力が証明されました。MasterCardだけではなく、Visaに関しても取得を進めています。

――現在、TSHの引き合いが多い地域についてお答えください。また、今後のサービスの目標についてはいかがでしょうか?
Deturche:TSHは、非接触が受け入れられやすい土壌があるヨーロッパとアジアで引き合いがあります。また、米国ではスターバックスでQRコードにより20%の方がモバイル決済を行っていますが、今後は世界のNFCモバイルペイメントでも同様の流れになると考えています。銀行ではカードのビジネスが占める割合がまだまだ大きいです。弊社では、デジタル化を進めることでそのビジネスを変革させ、今カードで行っているビジネスと同様の市場がモバイルで構築できるようにしていきたいですね。

※取材は2016年2月22日~25日までスペイン・バルセロナで開催された「モバイル・ワールド・コングレス2016」にて

この記事の著者

株式会社TIプランニング代表取締役 池谷 貴

株式会社TIプランニング代表取締役 池谷 貴

2009年11月にマーケティング、カード・電子決済、IT・通信サービスなどのコンサルティング、調査レポート・書籍の発行、セミナー運営、ポータルサイト運営などのサービスを手掛ける株式会社TIプランニングを設立。現在は、ポータルサイトとして「payment navi(ペイメントナビ)」「PAYMENT WORLD (ペイメントワールド)」を運営しています。
書籍の発行、執筆や講演など幅広く行っています。 ツイッター/フェイスブック

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