広島銀行、電子マネー「HIROCA」で広島の人々に選ばれるカードを目指す

2016年9月30日8:27

社員証・学生証への機能搭載、Webアプリとの連携で地域に密着したサービスを展開へ

広島銀行では、2016年4月11日から地域の電子マネー「HIROCA(ヒロカ)」の運用を行っている。学生証や社員証等への「HIROCA」機能搭載を積極的に進めるとともに、地場の企業と提携し、地域の消費活性化につなげていく方針だ。

プレミアム付き商品券「HIROCA」は99.9%の利用率を達成
地元資本での利用率が8割を超える

広島銀行では、広島県が公募した「電子マネー方式プレミアム付き商品券発行モデル事業」の事業者として採択され、2015年11月25日~2016年2月28日までプレミアム付き商品券「HIROCA」の取り扱いを行った。同期間での利用件数は104万9,445件、利用金額39億8,024万円 (チャージ総額39億8,608万円)、利用率99.9%となり、広島県からも高い評価を受けたという。

「運用面での大きなトラブルもなく、広島県からはお客様に好評であったという声をいただきました。ハウスプリペイドカードを発行している店舗では、『プレミアム付き商品券「HIROCA」』の方が2~5割、決済単価が高かったという回答もありました。プレミアムがある分、普段節約されていた消費について、背中を押した部分もあったと思われます」(広島銀行 個人営業部 カードビジネス推進室 室長 倉本英一氏)

右から広島銀行 個人営業部 カードビジネス推進室 室長 倉本英一氏、同室 宗像華乃子氏、担当課長代理 延堂光太郎氏
右から広島銀行 個人営業部 カードビジネス推進室 室長 倉本英一氏、同室 宗像華乃子氏、担当課長代理 延堂光太郎氏

また、プレミアム付き商品券「HIROCA」が利用できる加盟店は約650店舗だったが、「短期間にこれだけの店舗を集めたのは前例がないと、高い評価をいただきました」と、倉本氏は笑顔を見せる。同取り組みでは、広島県が実施したプレミアム商品券であったため、加盟店が県内に限定され、また、商店街に準ずる組織に加盟していない組織は対象から外れた。ナショナルチェーンで商店街に加盟しているところもあるが、地元資本とナショナルチェーンでの利用割合を見たときに、地元資本の先の消費が8割を超え、地場の消費喚起効果があったそうだ。

一方で課題としては、実施までの準備期間が短かかったことから、プレミアム付き商品券「HIROCA」が利用できる決済端末の準備に若干時間を要した点があった。そのため、今後の地域の電子マネーとしての「HIROCA」の展開については、POSの改修を含めて検討してもらっている。

なお、「期限内に利用されなかったプレミアム付き商品券『HIROCA』については、広島県への寄付手続きを終えております」と倉本氏は説明する。

学生証や社員証、交通系カードなどへの機能搭載が進む
4つの非接触決済機能を搭載したカードを発行

2016 年4月11日からは、地域電子マネー「HIROCA」として新たに運用を開始。広島銀行は、バリューイシュアとなって「HIROCA」を発行している。地域の電子マネーとしての運用に向け、資金決済法などの対応を含め、厳格な準備を実施。プレミアム付き商品券「HIROCA」加盟店をベースにサービスを開始したが、新たにビッグカメラグループが加入するなど、コンセプトに賛同する店舗も徐々に増えている。

地域の電子マネー「HIROCA」(裏面)
地域の電子マネー「HIROCA」(表面)
地域の電子マネー「HIROCA」(裏面)。HIROCAには「ゆめか」、「スマイルマネー」、「QUICPay」の機能も搭載
地域の電子マネー「HIROCA」(裏面)。HIROCAには「ゆめか」、「スマイルマネー」、「QUICPay」の機能も搭載

「HIROCA」の普及に向け、広島銀行が現在強化しているのは、学生証や社員証、交通系カードなどへの機能搭載だ。すでに、広島銀行発行の県立広島大学の職員証に「HIROCA」の電子マネー機能が搭載されている。大学や専門学校、企業では、食堂や売店、自動販売機への「HIROCA」決済の対応もニーズがある。また、「大学の証明書の発行機も『HIROCA』対応になれば、さらに学内のキャッシュレス化は進みます」と倉本氏は話す。さらに、マンション共用部セキュリティ(集合エントランス自動ドアや宅配ロッカー開錠)機能などへの対応も進めており、「HIROCA」の開放がすすんでいる。2009年から発行開始している交通系ICカード「〈ひろぎん〉PASPY」にも「HIROCA」の搭載を開始。これにより、「〈ひろぎん〉PASPY」は、広島県交通系電子マネー「PASPY」と後払い式電子マネー「QUICPay」、前払い式電子マネー「HIROCA」の3種類の電子マネーを搭載したカードとなった。

県立広島大学の職員証
県立広島大学の職員証

電子マネー方式のプレミアム付き商品券として発行を開始した「HIROCA」カードには、「HIROCA」の他、イズミの「ゆめか」、フレスタの「スマイルマネー」、「QUICPay」と、4つの非接触決済機能を搭載している。「ゆめか」や「スマイルマネー」は、磁気ストライプを利用した支払いが主だが、「HIROCA」カードでは非接触決済に対応しており、かざしての支払いが可能だ。また、「HIROCA」カードは広島銀行が発行しているため、電子マネーを搭載する提携先からは領域の利用料を徴収する形となる。ただ提携先にとっては、自社でカードを発行するよりもコストをかなり削減できる。現在も他のプリペイドの発行先から機能を搭載できないか、という話をもらっているそうだ。

なお、「HIROCA」カードに他の企業が発行するマネーが搭載されることで、「HIROCA」と決済時にバッティングしてしまう心配はないのだろうか? その点に対し倉本氏は、「われわれは後発であるため、『HIROCA』のみではお客様の携行率が下がります。たとえば、日常雑貨をゆめタウンで購入される方は『ゆめか』、生鮮食品の支払いはフレスタの『スマイルマネー』、特定の店舗での決済は幅広く使える『HIROCA』など、お客様の行動や嗜好によって使い分けていただければと考えています」と口にする。

今年度末までに20万枚の発行を見込む
多くの加盟店の協力を受けHIROCAの利用が進む

「HIROCA」は4月に地域の電子マネーとしてスタートして以降、すでに1万枚弱を発行。「プレミアム付き商品券「HIROCA」で10万枚ほどが発行されているため、今年度末までに20万枚の発行を見込んでいる。倉本氏は、「今後も提携が順調に進むと、発行枚数は30万枚を超える可能性もあります」と語る。

なお、従来はクレジットカードの〈ひろぎん〉バリューワンに付帯した子カードとして発行されていたが、地域の電子マネーとして再スタート後はキャッシュカードに付帯した発行が可能となった。そのため、企業や組織からの引き合いも増えており、「発行をお待ちいただいている先は10ほどあります」と倉本氏は説明する。

地域の加盟店の決済環境整備に向けては、EMV ICカード対応のクレジットカード決済端末、銀聯、交通系や流通系の非接触電子マネーなど、マルチ決済端末の整備を進めてきた。端末を置き換える場合は「JET-S端末」、決済インフラが整っている加盟店には「HIROCA」専用端末(VEGA)を用意しているが、地域の電子マネーとしてのスタート後も同様に進めていく。

「HIROCA」の稼働活性化については、加盟店側からも“盛り上げていこう”という声をもらっており、キャンペーンなどを展開してもらっている。たとえば、広島三越では、9月6日~9月25日まで、「HIROCA」で買い物をすると、累計金額の1%をキャッシュバックする取り組みを実施。また、ビックカメラグループでは、9月14日~10月31日の期間において「HIROCA」で決済された際にも付与ポイントがアップするなど、利用率向上につながっている。

専用のWebアプリで広島県内の店舗・企業情報を紹介
広島の消費者はもちろん、店舗からも選ばれる存在を目指す

地域企業との接点構築に向けた取り組みも強化している。広島銀行では、専用のWebアプリ「〈ひろぎん〉ガジェット」を提供。利用者は、広島銀行の情報はもちろん、広島ならではの選りすぐりの情報が閲覧可能となっており、提携カード発行先に活用してもらっている。たとえば、エリザベト音楽大学には関係者のみが閲覧できるページを提供。また、地域の店舗や企業がターゲットを絞ってマーケティング展開する際などに活用されている。同サービスは、提携先に対して付加価値として提供しており、手数料などは徴収していない。

エリザベト音楽大学の学生証
エリザベト音楽大学の学生証

現在、「HIROCA」の平均利用単価は約2,000円。たとえば、広島三越では主に65歳以上の人が、デパートの地下食品売り場でプレミアム付き商品券「HIROCA」を利用された。同期間中に「HIROCA」の利便性を実感したこともあり、その後も利用は継続している。

「HIROCA」への入金(チャージ)は、広島銀行の窓口にて現金での都度チャージ、モバイル専用マイページにおいてクレジットカードまたは口座振替による都度チャージもしくはオートチャージが可能だ。現在、クレジットカードからのチャージは約3割、そのうちオートチャージは15~16%となっている。オートチャージの割合は、サービス開始間もないこと、告知もこれから本格的に行うことを考えると成果を感じている。

加盟店が支払う決済手数料に関しては、大手・中小の加盟店にかかわらず一律の金額で提供しており、加盟企業からは、“地産地消”という「HIROCA」の概念を理解してもらっている。現在はカード発行に重きを置いているが、「当行の取引先は数万社ありますので、加盟店も早期に1,000店舗を達成させたいです」と倉本氏は意気込みを見せる。また、リアルに加え、インターネット決済においても支援していきたいとしている。

なお、広島銀行では、今年2月から3月にかけて、同行本店8階食堂で顔認証による決済の試行を実施した。具体的には、試行したいくつかの「顔認証」技術の特徴を確認した上で、「HIROCA」への導入など、地域の利用者へ利便性の高い決済環境を提供していきたいとしている。顔認証により、セキュリティ強化、手厚いおもてなしの実現、決済のスピードの迅速化等が期待できる。たとえば、ICカードと生体認証を合わせることで、よりセキュリティを強化することが可能だ。また、百貨店では上得意客が入店すると同時に判別が可能となることで、手厚いもてなしが実現する。さらに、顔認証により、カードをかざすことなく店舗での決済が実現できるかを検証している。

倉本氏は最後に、「広島にお住まいの方から“『HIROCA』がないと不便だね”と思っていただける、空気のような、普段は意識しないけれども、気づいたら必要だと感じていただけるサービスを目指していきたいです。個人のお客様だけではなく、お店の方からも『HIROCA』と言っていただけるカードに一日も早くしたいですね」と語り、笑顔を見せた。

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