日本でも決済端末のIC対応が義務化へ、世界のEMVトランザクションの状況は?

2016年10月24日13:00

国内でも流通事業者等に対し、クレジットカード番号等の適切な管理及び不正使用の防止(決済端末のIC対応化等)を義務付ける「割賦販売法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、第192回臨時国会に提出される。海外でもEMV化の取り組みは2000年代から行われているが、トランザクションの状況など、「不正使用対策・PCI DSSガイドブック」からその一部を紹介したい。

なぜEMVなのか?

2000年代初めからカード偽造に悩まされてきたイギリスやフランスなどはEMV化を推し進め、国内におけるカード偽造による損失を大きく減少させてきた。次いで、カード偽造の損害が拡大したカナダやオーストラリアもEMV化に着手し、国内におけるカード偽造を抑え込むことに成功した。こうした中、EMVの取り組みを行っていなかったアメリカでは、EMV化によって締め出されたカード偽造の犯罪者を招き入れる結果となり、2010年頃よりカード偽造によるカード不正の損害を急激に増加させた。いわば、アメリカが偽造カードのセキュリティホール化した。アメリカのEMV化がさらに遅れるさらに甚大な損害を招く恐れがあるため、2015年10月からはライアビリティシフトやカードとPOS端末機、ATMのEMV化を始めている。EMV化に遅れをとると、アメリカのようにセキュリティホール化するリスクをはらんでいる。

EMV化はNFCベースのモバイルペイメントに向けた環境整備に

また、EMV化を成し遂げた、イギリスやオーストラリア、カナダなどを中心に、Visa pay WaveやMasterCard Contactless(旧Pay Pass)などによるEMVスタンダードによるデュアルインターフェースのクレジットカードやデビットカードによるコンタクトレスペイメントが急速に普及し始めている。さらに、コンタクトレスペイメントカードとPOSカード決済端末機を共有するモバイル財布アプリを搭載したモバイルフォンのNFC(Near Field Communication)によるモバイルペイメントもApple PayやSamsung Payなどのリリースにより、本格的な普及が見込まれている。ペイメントカードのみならず、モバイルデバイスによるコンタクトレスペイメントに対応するためにも、POSカード決済端末機などのEMV化を含めた早急な対応が求められている。EMV化は、NFCベースのモバイルペイメントに向けた環境整備となる。

オーストラリアではEMV化が進んだことにより、コンタクトレスペイメントの推進にもプラスとなった

オーストラリアではEMV化が進んだことにより、コンタクトレスペイメントの推進にもプラスとなった

こうしたEMVの対象は、カードブランドでは、Visa、MasterCard、American Express、ディスカバー、JCB、中国銀聯、Interac(カナダ)、Ru Pay(インド)などで、これらのブランドのクレジットカードのみならず、オン・オフのデビットカード、ATMカード、オープンループのVisaやMasterCardなどのプリペイドカードなどが対象である。EMVにはコンタクトICチップをカードに埋め込んだ“コンタクトEMV”のほか、コンタクトICとコンタクトレスICのデュアルインターフェースでアンテナをカードに埋め込んだVisa pay WaveやMasterCard Contactlessなどの“コンタクトレスEMV”、スマートフォンなどの“モバイルEMV”、アップルWatchなどの“ウェアラブルEMV”がある。

各エリアでのトランザクションの状況は?

(図表)は、EMV Coによる2014年度(2013年6月〜2014年5月)と2015年度(2014年6月〜2015年5月) における、CP(Card Present)ベースのトランザクションにおけるEMV ICカード決済の地域別のトランザクション件数ベースシェアの推移を示したものである。なお、オンライン決済や通販におけるカード決済のように実物のカードを加盟店に提示しないCNP(Card Not Present)決済は含まれていない。

EMV ICカード決済の地域別のトランザクション件数ベースシェア(出典:EMV Co)

EMV ICカード決済の地域別のトランザクション件数ベースシェア(出典:EMV Co)

カナダ、ラテンアメリカ、カリブエリアは、2014年度の83.77%から2015年度の86.95%へと3.18ポイント増加している。アジア・パシフィックエリアは、2014年度の19.42%から2015年度の33.55%へと14.13ポイントと大きく増加しているものの、EMV ICカード決済のシェアはまだ33%にとどまっている。アフリカ・中東エリアは、2014年度の75.90%から2015年度の83.77%へと7.87ポイント増加。

イギリス、ドイツ、フランス、ポーランド、チェコ、トルコなどSEPA (Single Euro Payment Area:単一ユーロ決済エリア、EU加盟国を中心にスイスなどEU非加盟国を含む34の国と団体が加盟)に参加する国を中心に37カ国で構成されるヨーロッパ・ゾーン1は、2014年度が96.33%、2015年度が96.94%で、ほぼ100%に近づいている。

ロシア、クロアチア、ジョージア、ウクライナなど17カ国で構成されるヨーロッパ・ゾーン2は、2014年度の50.47%から2015年度の65.41%へと14.97ポイントと大きく増加しているものの、EMV ICカード決済のシェアはおよそ3分の2にとどまっている。

2015年10月からライアビリティシフトがスタートしたアメリカは、2014年度(2013年6月〜2014年5月)と2015年度(2014年6月〜2015年5月)は共にライアビリティシフトがスタート前であり、EMV ICカード決済のトランザクションのシェアは2015年度においても2.60%にとどまっている。

■「不正使用対策・PCI DSSガイドブック」より

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