沖縄県初の交通系ICカード「OKICA」が独自の規格を採用した理由とは?

2016年10月26日8:00

■沖縄ICカード
“沖縄ではOKICAが1枚あればどこでも使える存在を目指す”

沖縄県初の交通系ICカード「OKICA」は、2014年10月から沖縄都市モノレール「ゆいレール」、2015年4月27日から県内の路線バスで導入された。今後は船舶やタクシー等での導入が県主導で検討されており、沖縄ではOKICAが1枚あればどこでも使える存在を目指す。OKICAは、Suicaなどの交通系ICカードと互換性のない独自仕様となったが、そこには沖縄の特殊事情があるという。発行元の沖縄ICカードに話を聞いた。

独自規格で投資コストを抑制
路線バスの新設や変更が頻繁にある沖縄の特殊事情も影響

OKICAは、沖縄都市モノレール「ゆいレール」、県内の路線バス事業者4社で利用できる。また、2015年8月にはバス定期も導入。OKICAは学生や社会人の定期券での利用も多いが、3路線まで定期を載せることができるようにするなど、利便性向上に取り組んでいる。

OKICAでは、沖縄独自の規格を採用。その理由として、まず日本鉄道サイバネティクス協議会制定のICカード乗車券に関する規格「サイバネ規格」を採用すると、導入費用や維持費用が割高になることが挙げられる。

また、バスやモノレールにおいて、独自券種を多く有していることも理由の1つとなる。たとえば、モノレールでは、東日本大震災で沖縄に避難した人に対し、沖縄全体で支援する「ニライカナイカード(被災者支援カード)」を発行している。また、バスにも独自の券種があり、これらのシステムを引き継ぐ必要があった。

それに加え、「電車通勤がベースの首都圏とは違い、沖縄は車社会であり、路線バスの新設や変更が頻繁にあるため、路線変更の申請に時間がかかるサイバネ規格では対応が難しいと思われます」と、沖縄ICカード 高嶺綾氏は説明する。

沖縄ICカード 高嶺綾氏

ICカードの規格はソニーの「FeliCa Standard」を使用している。カードの処理速度は、0.6秒以内であるが、沖縄のモノレールやバスの利用者にとって十分に耐えられる秒数は実現している。モノレールではICカードもしくはQRコード式の切符により入出場が可能だ。また、路線バスでは、ICカードもしくは現金での支払いとなる。なお、那覇バスでは、NTTドコモの「iD」を導入しているが、読み取り端末はOKICAとは別となっている。

バスの定時・定速性の確保で成果
観光客の利便性向上が課題に

OKICAがスタートしたことで、カードを端末にタッチするだけで済むため、バスの定時・定速性の確保に向けて効果があった。また、障害者や高齢者などにとっても小銭の出し入れがなく、利便性が高まったそうだ。

無記名OKICA

OKICAではカードタイプに加え、OKICAのグランドオープンを記念して、フィギア付きOKICA「花笠マハエ」を県内のファミリーマートで販売した。販売価格は2,000円(SF500円込み)と、通常のカードタイプよりも高いが、独自デザインが支持され、一部の店舗を除いて、ほぼ完売となっている。こうした商品企画ができるのも、独自の規格を採用したおかげだ。今後も独自性のあるデザインのOKICA検討を進めていきたいとした。

フィギア付きOKICA「花笠マハエ」

OKICAの2016年7月末現在の発行枚数は16万枚。たとえば、OKICAの利用率は全体の約5割であるが、「当初の目標よりも発行枚数はやや伸び悩んでいます」と高嶺氏は打ち明ける。その理由として、「県民の通勤・通学として利用されるカードとしては問題ありませんが、モノレールの1日券などに比べ、観光客にとっては使い勝手が決して良いとは思われない部分もあります。OKICAをお使いいただくために、空港の到着ロビーに販売ブースを設けたり、機内販売するなども構想としてはありますが、未だ実現には至っていません」と高嶺氏は語る。

今後は、カードのコストを抑えた廉価版のOKICAなども含め、さらなる利用活性化に向け、検討していきたいとした。また、「モバイルFeliCa」を使ったサービスなども検討したが、Androidは機種ごとの検証なども含め、維持費用面で難しいという結論に至った。ただし、最新のiPhoneで利用できるようになった現在、国内の約6割のスマホユーザーをカバーできるため、今後の可能性はあるとみている。

2018年にタクシーおよび離島船舶へのOKICA導入を計画
職員証、学生証としての利用も想定

OKICA利用の広がりとして、沖縄県では、2018年にタクシーおよび離島船舶へのOKICA導入を計画している。「タクシーの開始により、端末さえ固まれば、商店街などでの電子マネーとしても展開できると考えています。加盟店開拓として、カード会社などとの提携も話を進めていきたいですね」(高嶺氏)

現在、離島船舶の利用となる「沖縄離島住民等交通コスト負担軽減事業」では、離島住民カードの発行、申込書の記入、管理、割引分(減収分)補填手続きが煩雑であるという課題があり、沖縄県、市町村、離島住民、離島航路事業者のいずれも運用負荷が高い状態だ。これをOKICAでの紙チケット購入を可能とすることで、窓口で通常運賃と離島住民運賃の差額計算処理を行い、離島航路事業者の申請を簡素化させ、業務負荷を軽減できるとしている。

タクシー会社では、OKICA端末の導入に加え、一部の会社が「楽天Edy」を導入しているため、同一端末上で電子マネーの1つとしてOKICA決済を行うことも検討している。

さらに、職員証、学生証といったように、ID機能と連携した利用を含め、他県を参考に検討を進めている。そのほか、地域振興券としての展開もまだ実現していないが、次に沖縄で展開される際はトライしていく方針だ。なお、OKICAにはフェリカポケットの機能が搭載されており、同機能の活用も可能だ。

OKICAでは、モノレールでは最大15%、バス会社では最大20%となるポイントも付与される。OKICAがスタートする前は、バスやモノレールで回数券が利用されていたが、それに代わるサービスとして展開している。貯まったポイントはOKICAに「10ポイント=10円」として還元。高嶺氏は、「モノレール利用者は多くの人がポイントを還元されています。逆にバスの場合、還元できる券売機や窓口が少ないため、今後は、還元できる券売機を増やしていきたいですね」と構想を口にする。券売機を増やすことで、チャージ環境の整備にもつながるからだ。さらに、将来的には、クレジットカードチャージ、銀行口座からのチャージも展開を検討している。

2023年までに35万6,000枚を目指す
いち早く香港のオクトパスのような存在に

沖縄ICカードでは、利用者にSF残高やポイントの確認をしてもらうため、WEB照会サービスを提供。利用者は、利用登録すると、ポイント残高とSF残高を確認できる。また、沖縄本島路線バス総合案内システム「バスナビ沖縄」では、沖縄本島の出発地と目的地の停留所を指定して、時刻表・運賃を検索できる機能を提供している。

なお、OKICAのシステムは、県の一括交付金により8割が補助となり、2割が沖縄ICカードの負担額となっている。プロポーサルにより落札したモバイルクリエイト株式会社が開発事業会社となっており、小田原機器や日本信号などが協力会社として名を連ねる。OKICAのシステムでは、モノレールは有線だが、バスはVPN(Virtual Private Network)によりリアルタイムでサーバに接続している。

OKICAでは、2023年までに35万6,000枚を目指している。現状は目標に届かないペースだが、さらなるサービス向上に取り組むことで、近づけていきたいとしている。高嶺氏は、「将来的に、香港の交通や街中など、あらゆるところで利用できるオクトパス(Octopus)のように、沖縄ではOKICAが1枚あればどこでも使える存在に高めていきたいですね」と語り、笑顔を見せた。

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