訪日外国人が1枚のカードで関西の鉄道・バスを利用できる「KANSAI ONE PASS」 実証実験中に予定枚数の倍の6万枚達成、レギュラー販売では年間9万枚を見込む

2017年9月28日9:07

アジアからの観光客が年々増加し、インバウンド需要が盛り上がっている関西地区。しかし観光客が多く訪れるのは、京都や大阪ミナミなど特定地域に限られているのが現状だ。鉄道やバスを使ってより広い範囲を周遊してもらおうと、関西経済連合会・関西観光本部・関西鉄道9社局では、1枚のカードで関西エリアのほとんどの鉄道・バスを利用できる「KANSAI ONE PASS」を発行している。2016年4月からの1年間の実証実験を経て、2017年4月からレギュラー販売を開始。主にネットを通じて海外にサービスを告知し、2017年度中に9万枚の販売を見込む。

JR西日本、私鉄、公営局など9社局が協調
「ICOCA」をベースにサービスを展開

JR西日本、阪神電気鉄道、阪急電鉄、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道、大阪市交通局、神戸市交通局、京都市交通局の鉄道9社局、公益社団法人関西経済連合会(関経連)、一般財団法人関西観光本部は、関西への外国人旅行者の受入環境整備の一環として、訪日外国人観光客限定の関西統一交通パス「KANSAI ONE PASS」を発行している。

「KANSAI ONE PASS」       ©Tezuka Productions

関西では、関経連などが2015年2月に「関西広域観光戦略」を取りまとめ、さまざまな取り組みを進めてきた。訪日外国人旅行者の利便性向上に資する「KANSAI ONE PASS」は、この戦略における、受入環境整備の核の1つと位置づけられている。

2016年4月8日から1年間、発行予定枚数3万枚という目標を掲げて実証実験を行ったが、結果的にその倍の6万枚を発行。この成果を踏まえ、2017年4月17日からレギュラー販売を開始し、年間9万枚の販売を目指す。実証実験の段階では1枚3,000円(デポジット500円+利用額2,500円)で販売していたが、レギュラー販売では1枚2,000円(デポジット500円+利用額1,500円)での販売としている。

大阪、神戸、京都などを擁する関西エリアには見所が満載だ。それらにアクセスするための鉄道・バスの交通網も非常に発達している。しかし、多くの鉄道会社・バス会社が存在し、会社間の乗り入れなどもある入り組んだ交通網は、訪日外国人観光客からするとわかりにくく、団体客から個人客の比率が高まっていく流れの中で、これが広域観光周遊を妨げる理由の1つとなっていた。

この課題を解消するために誕生したのが、「KANSAI ONE PASS」だ。1枚のカードで関西エリアのほとんどの鉄道・バスに対応。残高が少なくなればチャージして、繰り返し使える。チャージ額の上限は2万円だ。

このサービスのベースとなっているのは、JR西日本の「ICOCA」。「私鉄、公営局のPiTaPa(ピタバ)は「ポストペイ」を基本としているため与信に時間がかかり、プリペイド方式のICOCAをベースにするのが最も現実的な選択でした」と、公益社団法人関西経済連合会 産業部参与 奥居武氏は振り返る。

公益社団法人関西経済連合会 産業部参与 奥居武氏

訪日外国人観光客にKANSAIブランドの浸透を図ることを意図し、カードの券面には、関西にゆかりのある手塚治虫氏のイラスト「鉄腕アトム」と、「はなやか関西」シンボルマークを掲載している。

交通利用に関する割引はないが、趣旨に賛同する店舗や社寺など200カ所以上の施設で、カード提示により優待サービスが受けられる。優待の内容は、購買・利用代金の割引、プレゼントの進呈、特別体験の提供などとなっている。

ネットでサービスを告知するとともに、関西の魅力を発信
台湾、香港、中国からの個人旅行客を中心に利用が進む

「KANSAI ONE PASS」のサービス告知はネットを中心に実施。各国のSNSなどを核に、クチコミで認知が広がっているようだ。

カードは、関西空港および京阪神の各社局主要駅19カ所で販売。その中でも、関西空港での販売枚数が圧倒的に多くなっている。購入者には、鉄道路線マップ付き利用ガイドを配付。このマップについているQRコードを読み取ると、関西の観光名所や、優待サービスを受けられる施設の案内が掲載された専用の4言語サイトに誘導される。

サイトは購入者でなくても誰でも見ることが可能だ。「KANSAI ONE PASS」のサービス内容を含め、関西500カ所の観光スポットを案内している。当初は訪日後に閲覧されることを想定していたが、訪日前の旅行立案時にチェックしている人も多い。モバイルからは旅行中にもアクセスされており、累計PV(ページ・ビュー)は300万を超えている。2016年4月の立ち上げ後、一度リニューアルを施したが、その際、位置情報を用いて近隣のおすすめスポットを案内する機能を追加した。「もう一歩、外側に、足を延ばしてもらうため」(奥居氏)の工夫である。

カード購入時にはパスポートを提示してもらっているが、追って購入者に対してモバイルで実施したアンケートによれば、利用者の50%超が台湾からの旅行客。次いで多いのが香港、3位が中国本土となっている。

アジア諸国には類似の仕組みを持つ交通系ICカードが普及しているため、使い方の理解が浸透しており、これまでトラブルは発生していないという。

各観光スポットに満遍なく足を運んでもらう取り組みを強化
万博誘致に向け、「KANSAI ONE PASS」をアピールポイントの1つに

関経連では、発行枚数もさることながら、利用者の満足度を高めることに注力したいと考えている。アンケート結果では、「大変満足」と「満足」が合わせて90%超。「子ども用のカードがほしい」「優待を受けられるスポットをもっと増やしてほしい」といった、今以上のサービスへの期待の声も寄せられている。当面の課題としては、訪れる地域にまだ偏りがあるため、関西地域の各観光スポットにまんべんなく訪れてもらう取り組みを強化していく方針だ。

関西では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに前後して、2019年にラグビーワールドカップ、2021年にワールドマスターズゲームズの開催が決定しており、大阪が立候補している2025年の万博開催地も2018年秋に決定する。関経連では、これらの流れの中で、訪日外国人観光客を迎え入れる準備が整っているという意味で、「KANSAI ONE PASS」をアピールポイントの1つとしていきたい考えだ。

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ペイメントナビ編集部

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