PCI DSS対象範囲の特定(3)

2010年9月15日8:30

PCI DSS対象範囲の特定(3)

右図のように加盟店のECサイトで、ユーザがID、パスワードを入力してログインし、商品を決めたら決済方法を選ぶ。ここでペイメントカードを選択すると、以後は加盟店サイトを離れ、決済代行事業者のページへ飛ぶ。カード会員データを入力する画面から決済代行事業者のサイトへ移るため、自社のWebサーバなどのシステム上でデータが伝送、処理されることはない。

カード会員の認証・決済は決済代行事業者側で行い、売上処理の情報だけを加盟店サイトへ戻す。売上処理の情報は、それだけ盗まれたとしてもほとんどリスクはない。カード会員データの処理、伝送、保存はすべて委託するため、この状態で運用すれば準拠項目は激減する。ただしこの場合でも加盟店はPCI DSSの準拠が免除されるわけではないので注意いただきたい。

小規模のインターネット加盟店の場合、投資対効果の観点から、このサービスを選択することが賢明といえる。取扱件数が少ない加盟店で、カード会員データを蓄積しているサイトでは、保存する理由が明確でないケースも見られる。画面遷移型が登場したのはここ数年のことで、それまではサーバに決済モジュールを組み込む形式で処理していた事情もあるようだ。モジュール型は、カード会員データがWebサーバに伝送されるので仮に蓄積されていない場合でも245項目の完全準拠が必要になる。特別な理由もなくカード会員データを自社で蓄積していたとすれば、この機に見直すべきだろう。

画面遷移型はセキュリティ面のメリットは大きいが、利便性が失われる部分もある。データを保持しないため、ユーザは毎回カード番号を入力しなければならない。Amazonなどの大手ショッピングサイトでは、ログインして購入手続きをする際、カードの選択画面が出るが、ログインユーザのカード情報を蓄積しているためそうしたサービスができる。

このような大規模ECサイトは、1人のユーザが繰り返しショッピングに訪れることを前提にしたビジネスモデルであるため、ビジネス上の要件として非保持のサービスは採用できない。また毎月課金が発生してクレジット決済をするサービスでもユーザの入力なしで定期的に承認処理しているため、加盟店側でカード会員データを持たざるを得ない。

セキュリティ、利便性の面では一長一短だが、1ユーザの利用頻度が年に数回であれば、利便性は多少落ちても、毎回、カード情報を入力してもらった方が無難だろう。

PCI DSSの対象範囲は、カード会員データを、伝送/処理/保存する情報システム(及び関連する業務プロセス)である。当然メインフレームであっても、カード情報を扱っていれば含まれる。インハウスのコールセンターも同様だ。国内ではPCI DSSの対象から漏れていたような例もあるようだが、対象範囲を曖昧にしてはならない。米国のあるQSAは対象範囲を狭く、別のQSAは広く設定したケースがあった。監査を受ける企業は狭く判断した方を選択した例が実在している。必ずしもこの例が悪いとはいわないが、もし準拠コストを下げるために本来は含まれる範囲が除外されたとすると問題がある。

PCI DSS v1.1の際は、セグメンテーションの考え方に曖昧な部分も残っていたが、v1.2以降は、セグメンテーションの妥当性、あるシステムを対象範囲から除外した理由なども、監査報告書に明記することが義務づけられた。下図のとおりドキュメントの「付録F」では、セグメンテーションのフローチャートも示されている。

 

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※本記事は「PCI DSS Version1.2徹底解説」の一部分をご紹介したものです。

■「PCI DSS Version1.2徹底解説」の短期連載目次

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