EC・通販ビジネスの動向と決済との関わり

2019年4月17日8:00

国内でもEC ビジネスの成長は続いており、スマートフォンの普及やデジタル化の進展により、今後はリアル店舗との関わりもさらに深まると思われる。そこで、翔泳社 ECzine 編集部 中村直香氏に、EC・通販ビジネスの動向について紹介してもらった。

ECzine 編集部 中村直香

1)東京オリンピックに向け、急がれるキャッシュレス化

経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査(図表1)(※1)」によれば、2017年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、16.5兆円。前年の15.1兆円と比べ、9.1%増加している。「ECの市場が伸びている」とよく言われるが、この数字からみても、それは間違いないようだ。そんな中、ECだけでなく、ビジネス全体で最近よく耳にする言葉といえば、キャッシュレスだろう。

(図表1)経済産業省「電子商取引に関する市場調査」
 

2015年時点で、日本のキャッシュレス決済の割合はおよそ20%(図表2)(※2)。キャッシュレスを語る上で、よく例にあがる中国はというと、2015年の時点ですでに60.0%(※2)に達している。中国がここまでキャッシュレス化が広まった背景には、偽札や現金の盗難など、現金への安全性の問題、スマートフォンの急速な普及などが考えられる。

(図表2)各国のキャッシュレス化の状況

一方、「日本は現金社会だからなかなかキャッシュレス化が進まない」と言われるのは、中国のキャッシュレス化が進んだ理由とは逆だろう。道を歩いていて現金を盗難されることも、偽札に出会うこともそう滅多にない日本において、現金を信用できなくなる要素はあまりに少ない。クレジットカードや交通系電子マネーが使えない場所はあっても、現金を使えない実店舗はほぼないに等しい。日本人にとって現金が、問題なく信用できるものであるということが、日本のキャッシュレス化を遅らせている要因であることは間違いないはずだ。

そんな日本がいま、急速にキャッシュレス化を進めている。その背景にあるのが、2020年の東京オリンピックだ。この五輪を見据え日本政府は、2025年までにキャッシュレス比率を40%まで引き上げる方針を打ち出した。五輪期間中には、1日当たり最大 92 万人の観戦客らが訪れることが見込まれている。五輪を目的に東京や日本を訪れる外国人観光客の中には、キャッシュレス決済に馴染みのある国からやってくる人もいるだろう。そんな外国人観光客のニーズにも応えるため、日本政府はキャッシュレス決済への対応を急いでいるはずだ。それが、東京五輪まであと2年と迫った2018年に、キャッシュレス決済が大きな盛り上がりを見せた要因だと考えられる。

他国を見てみよう(図表3)(※3)。注目すべきは、2007年から2016年のおよそ10年間で、キャッシュレス比率が30.8%アップしたイギリスと、5年でおよそ20%増加している中国だ。同期間におけるキャッシュレス化進展の施策例として、それぞれロンドン五輪、北京五輪をきっかけに政府がその普及を促進したことが挙げられている。このことからみても、東京五輪の開催に向けて、政府がキャッシュレス化推進を明言したことは、キャッシュレスを進めるという観点からみると、絶好の機会だと思われる。

(図表3)諸外国におけるキャッシュレス比率の変化とキャッシュレス化進展の施策術

※ 1 電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました~国内BtoC-EC 市場規模が16.5 兆円に成長。国内CtoC-EC 市場も拡大~
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180425001/20180425001.html
※ 2  経済産業省 キャッシュレス・ビジョン http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf
※ 3 キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識(経済産業省) http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoryu/credit_carddata/pdf/009_03_00.pdf

2)増える無人店舗 可視化されつつあるオフラインの購買行動

2018年1月に、Amazonは無人コンビニエンスストア「Amazon Go」をオープン。2018年10月には、シアトル、シカゴに続き、6店目となる店舗をサンフランシスコにオープンした。わずか10カ月ほどでアメリカに6店舗を展開している。Amazonは、2021年までに最大3,000店の開業を目指しているという。(※4)

専用のアプリをゲートにかざして入店。店内ではアプリでバーコードをスキャンし、手にした商品を持った状態で専用のゲートを通って店舗を出ると、自動的に自分のAmazonアカウントに課金される。この仕組みにどれくらいの金額が投資されたのかは計り知れない。

Amazon Goのように莫大なコストをかけることなく、もう少しミニマムな形で無人店舗を実現したのが、工業用間接資材のEC販売を手がける「MonotaRO」だ。2018年4 月に、AIやIoT、ビッグデータプラットフォームなどを提供するオプティムと共同で、初めてのオフライン進出にして、無人店舗の「モノタロウ AI ストア powered by OPTiM」を佐賀大学構内にオープン。大きな話題を集めた。MonotaROのECでは、切削工具や研磨材などの工業用資材から自動車関連商品や工事用品、事務用品など、現場や工場で必要とされるおよそ1,500 万アイテムを販売しているが、この無人店舗では、約2,000アイテムを販売している。(※5)。来店したユーザーは、専用アプリを使用して入店し、アプリ内のカメラで商品バーコードを読み取り、決済することが可能。2019年には2号店もオープンする予定だという(※6)。OPTiM AI Storeの公式サイトによれば、「現実的な費用で設置することが可能」なようだ。

こういった無人決済店舗の可能性を探るための実証実験が、東京・赤羽駅ホーム上のkioskで行われた。これは、JR東日本とJR東日本スタートアップが、2018年10月からおよそ2カ月間、赤羽駅の5,6番線ホーム上でAI無人決済システム「スーパーワンダーレジ」の実証実験として実施したものだ(※7)。入店時には、店舗入口にある交通系電子マネーをかざし、購入する商品を売場の棚から取り、決済ゾーンへ。ディスプレイに表示される商品名と合計金額を確認し、交通系電子マネーで決済。決済が完了すると出口ゲートが開く。

こういった無人店舗によって、人件費が削減されるのはもちろん、ユーザーの購買データを取得することができるというのも大きな目的だろう。オンライン上では、どんなキーワードで検索したのか。そのページを何秒みて、その商品を最終的に買ったのか否かといった、ユーザーの行動が可視化されやすい。だがだからこそ、いまだに購買の95%が起こっている実店舗(※1)で、ユーザーの行動がなかなか見えづらいことが、店舗ももつ事業者に、よりもどかしさを与えているようにも思う。オムニチャネルを進めるために、まずはIDの統合が不可欠と言われるが、それによって可能になるのは、ユーザーが、「何を」「いつ」買ったかを把握すること。確認できるのは、購買データだ。どうやってユーザーが店舗の商品を見ていたのか。どれくらいお店にいたのか。どんな商品を手にとったのかといった、購買に至るまでの行動まで知ることができたら、と感じる事業者も少なくはないだろう。

モノタロウ AI ストア powered by OPTiMの店舗では、カメラ5台とEC決済を連動させ、そのカメラから取得する画像をAIが解析し、人数や来店者の属性を識別している。赤羽駅のkioskで採用された「スーパーワンダーレジ」は、天井に設置されたカメラがユーザーを認識し、商品棚にそれぞれ設置されたカメラなどのセンサーで、来店者が手に取った商品を認識することができる。こういったデータを駆使すれば、オンラインと同じように、店内でユーザーが購買に至るまでの行動も、少しずつ明らかになっていくだろう。

※ 4 「アマゾン・ゴー」21 年までに3000 店計画 米報道 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35555040Q8A920C1000000/
※ 5 佐賀大学内でリアル店舗初出店4 月2 日(月)、「モノタロウ AI ストア powered by OPTiM」オープン https://www.monotaro.com/main/news/n/2588/655.pdf
※ 6 モノタロウ、初の実店舗は無人運営 オプティムと連携 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28313860Z10C18A3000000/
※ 7 AI を活用した無人決済店舗の実証実験第二弾を赤羽駅で実施~レジで会計待ちをすることなく、スマートなお買い物体験を~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000149.000017557.html

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